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2013年9月13日 (金)

ジャズピアニストとしての大江千里さん

ブログを放置していた間も、地味にアクセスはあるんですね。
いったいどんな殊勝なお方が、この毒舌ブログを読んでくださっているんでしょうか?

さて、また毒を吐きます。
もちろんここで退出してくださっても結構です。

先日、大江千里さんがNHKのスタジオパークに出ていらっしゃいました。
47歳にしてアメリカのニュースクール大学に入学して、ジャズを学ばれたそうです。
その向上心、すごいと思います。

若い学生から、「一人だけジャズじゃないヤツがいる」と言われたり、教授から「一番下手」と言われたりして、日本でそこそこの実績を残したミュージシャンであるのに、そのプライドをかなぐり捨てて、本場のジャズを学ぼうとする向学心、すごいと思います。ほんとうに謙虚な方なんだな、と思います。

しかし、ここで思うんですが、どうしてみんなジャズを学ぼうと思うんでしょうか。
私は若い頃、大江さんの楽曲、特に「pleasure」というアルバムに衝撃を受け、こんなかっこよくておしゃれで、しかも感動的なコード進行って何だろう! と思ったのですが、それから20年近く経って、ジャズの理論というのを勉強して、その謎の一端を垣間見たのでした。

でも、大江さんなら、少なくともコード理論は知っていたことになる。
ならば、結局、番組内でもおっしゃっていたように、縦乗りの音楽ではなくて、横乗りの、指パッチンをしながら「イエ~イ」っていう、要するに4ビートの「どジャズ」を習いに行ったってことですね。

別にそれ自体はいいのですが、大江さんが番組内で披露したジャズのデュオの曲「Boys mature slow」でしたっけ、大江メロディを残したオリジナルなジャズって感じでしたが、その曲は日本のリスナーのどのぐらいの人たちに「届いた」のでしょうか?

番組内でも、視聴者から「大江千里さんが何か遠いところに行ってしまったような気がする。だけど、大江さんがいいというジャズをこれから少しずつ聴いていきたいと思います」というようなメッセージがあった。古くからの大江ファンの、偽らざる心境なのではないだろうか。

何か言いたいことを言うのに、母国語で言うのと外国語で言うのと、どちらが伝えやすいだろうか。

私は母国語だと思うんですがね。

ジャズというのはやっぱり英語の音楽なんですよ。
あのシンコペーションの乗りというのは、語末の子音と語頭の母音がくっついて音節を形成する、英語の乗りなんですよ。音韻体系からして、日本語とは全然違う。
だから、ジャズというのは外人がやる、英語の音楽なんです。

それに対して、西洋のコード進行を使いながらそれに日本語を乗せてメッセージを伝えるJ-POPというのは、日本人が編み出した素晴らしい音楽だと思うんです。そして、日本語を母語とする人には、それが一番メッセージを伝えやすいし、伝わりやすい。それで、涙を流したりするわけです。

私も、若い頃、大江さんの「リップスティック・グラフィティ」や「Rain」などを聴いて涙したもんです。

とりわけビバップ以降のジャズというのは、曲芸的なハイテクニックを聴衆に披露する、いわば格闘技的なバトル音楽であって、メッセージで人を泣かす、というのではありません。基本的に、テクニックで人をうならせたり、ここでこのテンションを鳴らすとめっちゃ気持ちええなぁ~みたいなところで人を感心させる興行的音楽なんだと思います。

だから、人によっては、ジャズの千里さんってよくわかんない、やっぱり昔のJ-POPやってた千里さんがいい、という人は多いんじゃないんでしょうかね。

もし、人を感動させることや共感を広めることを目的とするなら、やっぱり母語による音楽の方が有効なんじゃないかな、と思うわけです。もちろんJ-POPだと普遍性がないと考える向きもありますが、しかし、日本のJ-POPのすばらしさがアメリカでも認められ、アメリカのミュージシャンが日本の曲をカヴァーしてたりする。そのぐらい、日本のJ-POPは世界に誇るべき文化なんだと思います。

要するに、私が言いたいのはこういうことです。
音楽にはヒエラルキーがあってその頂点にジャズが位置する、ジャズが最も高尚な音楽である、のでは断じてない。それはたんに言語の違い、ローカリティの問題であるだけなのである。日本民謡には日本民謡のすばらしさがあるし、J-POPにはJ-POPのすばらしさがある。それがわかってないと、ジャズ真理教みたいな、妙なことになるんじゃないか、と。実際そういう人を見たことがあるので。(で、そういう人に限ってジャズがわかってなかったりする(゚m゚*))

番組を見て家内に「やっぱりジャズの大江千里より、ポップス歌ってた大江千里の方がぐっとくるなあ~」と家内に言ったら「そりゃアンタが大江千里のことを妬んでるだけやろ」と、にべもなく一蹴されてしまったので、ここにぶちまけた次第です。

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