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2017年12月 2日 (土)

読書『晴れたらいいね』藤岡陽子

新聞広告に同じ著者の『満点のゴール』が泣けると出ていて、書店に行ったが、この本が目に付いたので買った。
タイムスリップ&入れ替わりもの&看護婦ものである。以前看護師を扱った小説『ナースコール!』(川上途行作)を読んで感動したので、期待したのだが、微妙。

いちばん違和感があったのが、主人公紗穂の物の言い方であった。あの時代あの空気の中であのような物の言い方は可能なのだろうか。まあ、それがこの小説の眼目ともいえるのだろうが…。それに、平成を生きる現代っ子に、戦地でのあの強行軍を突破することが果たして可能なのだろうかという疑問も持った。

もう一つの違和感は、「平和なヘイセイ」から振り返ってあの時代を裁いているように感じられたからである。これは私の深読み過ぎなのかもしれないが。
「こんな、誰のために始めたのか分からない戦争を心底憎んでいる」と、登場人物に語らせているが、あの戦争は防衛戦争であり、当時の人たちにとってはそれが当たり前の認識であった。「愚かな戦争」というのは、後世の人間の後知恵にすぎない。
なので、あまりリアリティを感じられなかった。

ただ、巻末に参考文献が列挙されているので、それなりに取材・研究をされたのだろうとは思うし、軍医や看護婦の立場からすれば、どんな人間の命も貴重であり、命を救うことが第一だと考えるのは当然のことであり、その点に関しては異議はない。作者としてはそういう側面を訴えたかったのであろう。

私としては、「今」の観点から過去を裁いたり教化したりするのではなく、その時代の人たちがどう考えていたか、ということの方が関心がある。であれば、現代作家によるフィクションではなく、巻末の参考文献などを読むべきなのだろう。

ただ、最後のシーンは感動的であり、落涙不可避であった。この作家の他の作品も読んでみたいとは思う。

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